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鹿児島地方裁判所 昭和56年(わ)10号 判決

裁判所書記官

堤博美

本籍

鹿児島県曽於郡志布志町志布志三、一九〇番地

住居

同県同郡同町志布志三、一八八番地

歯科医師

坂元宏海

昭和一三年四月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官今井正彦出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、鹿児島県曽於郡志布志町志布志三、一八八番地において歯科医院を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、同医院の経理全般を管理している被告人の母ト子らと共謀のうえ、自由診療収入の一部を正規の帳簿に記載しないで除外し、これによって得た資金で被告人や家族名義又は仮名の定期預金等を設定するなどして所得を秘匿したうえ

第一  昭和五二年分の総所得金額は四七二九万八九〇〇円でこれに対する所得税額は二一三八万三五〇〇円であるのにかかわらず、昭和五三年三月一四日、鹿児島県曽於郡大隅町岩川六、六五九番地三所在の大隅税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一〇七五万〇七七〇円でこれに対する所得税額は一二六万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により金二〇一一万七一〇〇円の所得税を免れ、

第二  昭和五三年分の総所得金額は四五八九万三一五五円でこれに対する所得税額は二〇〇三万六三〇〇円であるのにかかわらず、昭和五四年三月一五日、前記大隅税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一九四八万四〇八六円でこれに対する所得税額は四九三万〇二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により金一五一〇万六一〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書一二通

一  坂元ト子、坂元純子の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の坂元ト子(六通)、坂元純子(五通)、坂元光宏(二通)、押井経仁、野元茂樹、浜田和子、左近充直子、川住静子に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び脱税額計算書説明資料

一  大蔵事務官作成の査察官調査事績書一二通(検4 12 15 17 18 24 25 26 28ないし31)

一  押収してある手帳一冊(昭和五六年押第三〇八号の八)、青色申告者書類つづり一冊(同押号の一一)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の査察官調査事績書(検27)

一  押井経仁作成の証明書

一  押収してある昭和五二年度日計表明細一綴(同押号の一)、同年度日計表一綴(同押号の二)、同年度収入メモ一綴(同押号の三)、同年度棚卸表一綴(同押号の七)、同年度確定申告書一枚(同押号の九)

判示第二の事実につき

一  押収してある昭和五三年度日計表明細一綴(同押号の五)、同年度日計表一綴(同押号の六)、同年度収入メモ一綴(同押号の四)、同年度確定申告書一枚(同押号の一〇)

(法令の適用)

一  罰条 所得税法二三八条、刑法六〇条

一  刑種の選択 懲役刑、罰金刑の併科

一  併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条四八条二項

一  労役場留置 同法一八条

一  執行猶予 同法二五条一項(懲役刑について)

一  訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 城間盛俊)

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